2人が本棚に入れています
本棚に追加
現3年生と大学院の女生徒が教室で話していた。いつもだったら気にも留めないのに、なぜか今日は話が耳に入ってきた。
「先輩、あと少しで私4年生になっちゃいますよ。そして4年生になると地獄の卒論単位が待ってるんです。本当にいやになっちゃう。なんでうちの学科って、卒論の単位を取るのこんなに厳しいんですか?」
後輩の愚痴を聞いた院生の女生徒は、他人事のように笑いながら答える。
「なんか、先生たちが気合入っててね。今年こそは、うちが最優秀論文に選ばれるんだって。いや、卒論発表は大変だよ?でもねうちのゼミは、まだ楽なほう。隣の登根ゼミだったらやばかったね。本当、スパルタ指導と発表の細かいチェックで有名だから」
院生は後輩を慰めているらしい。うちのほうは、まだましだと。そしてスパルタで有名な登根ゼミは俺が所属しているゼミだ。
「いや、でもうちだって厳しいですよ。私奨学金もらって大学来てるから、卒論単位の成績悪いと、返済免除狙えないじゃないですか!」
「あれ、返済免除狙ってんの?あれって、各学科上位5名しかなれないんじゃなかったっけ。ちなみに今順位何番?」
「いや、内緒ですよ。先輩」
「ふーん、それじゃあ卒論単位を取るコツ教えてあげない」
「すみません、嘘です。ちゃんと言います!私今5番なんですよ。だからあと1つ順位落とすと返済免除に引っかからなくて、うわああああん」
と女子大生は泣き出す。そりゃそうだ、各学科180人近く学生がいる中で、その中のトップ5位まで入っているんだ。一個順位を落として、返済免除なしはあまりにも悔しすぎる。ちなみに俺も今までの成績で5位になっていて、つまり後がない。
「じゃあ、こんな話聞いたことある?」
と先輩がまるで怪談でも話すようなノリで後輩の子に話し出した。
【夜旧館の教員用のポストのところへ行くじゃん。そしたら、ひとつ多いんだよ、ポストの数が!そのポストの中には、完璧な卒業論文に必要な資料が入ってるとかだってさあ。そこから資料をとって、大学の外まで逃げれればOK!】
完全に都市伝説だろ、もしくは学校の怪談か。そのとき後輩の子はふと疑問を先輩へ投げかける。
「先輩、逃げるって何から逃げるんですか?え、まさか怖いやつですか...。私怖いの苦手なの先輩知ってるでしょ!」
「なんか単位落としてメンタルが病んじゃった生徒の魂とか昔バカやって死んじゃった生徒の怨霊とか、色んなヴァージョンの話を聞いたことあるよ」
「先輩!ひどいです。私怖いの苦手だって、知ってるのに。こっちは真剣に相談してるのに!」
「はいはい、あんたはまじめだから大丈夫。これから一年間一生懸命やるんでしょ、私はあんたの事は心配してないよ」
と先輩が後輩に話している。なんだ、もっとコツとか話すのかと思ったのに、時間の無駄だったな。と思いながら、教室の前を素通りしようとした時だった。先輩は後輩に向かって、
「ま、あんたはやんないと思うけど、さっきの噂の続き、逃げきれずに捕まっちゃうと異世界に連れていかれちゃうんだって」
「先輩!わざとやってます?!私怖いの苦手なんだってば、もう!」
最初のコメントを投稿しよう!