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なんだ、旧館から出た瞬間、俺はどっと嫌な汗が噴き出た。まさかこの噂が本当だったなんて。マジもんかよ。と思いながら、口に手をあてて笑う。流石に大学の敷地内で電灯もついてる中、襲ってこないだろう。そう思って大学の校門方向に向かった。
電灯が点いていて、これならあまり恐怖を感じない。すると、入り口の向こうから誰かが歩いてきた。おまわずびくっとするが、すぐに頭を切り替えた。落ち着け、理系の学生は研究室に寝泊まりして実験をしている人たちがいる。夜間に近くのコンビニへ夜食とか買いに出かけていたのかもしれない。
そう思いながら、その場でこちらに向かって歩いてくる人物をじっと見つめた。電灯の下にその人物に光が当たる。
それは背の高いヤギの頭をした黒いマントに身を包んでいる者だった。そして、左手には血だらけの包丁を持っている。
「ひいっ...!!」
俺は思わず、悲鳴をあげ走り出した。背後からヤギ男がものすごい勢いで走ってくる。こいつ、いくらなんでも速すぎだろ...!!
とにかく全速力で走るが、だんだん距離を詰められる。
「うわっ!」
何かにつまずいて、俺は転んでしまった。なんだ、この柔らかいものは、そしてなんだか血生ぐさい臭いを感じた。俺は、恐る恐るつまずいた原因のものを見た。
「......!!おっえ、はあ」
俺が見たのは、人だったものだ。体がズタズタに切り刻まれている。血は飛び散り、内臓も下手したら見えそうだ。グロテスクな現場を見て、俺は吐いてしまった。そんな時だった。
「おやおや、ここまで逃げ切るなんて今年の学生は優秀な子が多いですね」
と俺の背後にヤギ男がいた。包丁をすっと構え、首を傾げながら話している。
「っか、おま、え、人を」
「この方は、あなたと同じようにゲームに参加して負けてしまった方ですよ」
そう言って、包丁の血を自らの白い手袋で拭き取った。
「では、ここから私の番ですよ。じゃあ、いつもの言葉を。【ねえ、単位欲しいですか...?】」
と言って、包丁を俺に向かって振り落とした。
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