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「っは? ここどこだ」
先ほどまで大学にいたはずなのに、気がついたら見知らぬレトロな商店街にいた。俺の近くには忌々しい資料がクリアファイルにきれいに収まって入っている。
資料を取り、辺りを見渡した。夕方の薄暗いレトロな商店街のようだが、どうも居心地が悪い。この場所は人のためにないような感覚を受けた。
おかしい。先ほどまで深夜だったのに急に時間が変わったかのようだ。そして人っ子ひとりいないレトロな商店街に気味の悪さを感じる。
それでも俺が今持っているクリアファイルのほうがよっぽど恐ろしかった。
クリアファイルを置いてどこかへ逃げようかと思ったが、なぜか手に取ってしまう魔力みたいなものを感じるのだ。
そして思わずクリアファイルの中から資料を取り出して、中身に目を通したい気分に駆られる。
早く家に戻らないといけない。そう思い近くの家や店に声をかけてみる。
「誰か、誰かいないか!!」
自分でも切羽詰まった声で叫んでいると思うが、気にしている余裕もなかった。しかしどの家からも返事が返ってこない。
「まじかよ...」
途方に暮れながら、俺は商店街を早歩きで進んでいく。すると一軒だけ電気が点いている店を見つけた。なぜかその明かりのついた店を見た瞬間、とても安心した。
「俺、もしかして助かったのか...?」
そう呟きながら、目元を拭う。どうやら、俺は半泣きだったらしい。そして急いで店に駆け込んだ、常世喫茶「冥」に。
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