第五章 オーストラリア QLD ブリスベン

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  「ん? 英語? それにアボリジナルって……まさかとは思いますけど、今オーストラリアにいるんですか? 遠いにも限度ってものがあるでしょう!」  怒号が耳をつんざき、思わずスマホを遠ざける。  速攻でバレた。  アボリジナルといえばオーストラリアの先住民を指す言葉だ。  狩猟民族だった彼らにとってブーメランは必需品であり、今ではオーストラリアの土産物として有名である。 「本当にいつもいつもあなたって人は! とにかく早く帰ってきてください。今すぐです! 間違っても今からカンガルーに会いに行こうだとかゴールドコーストでサーフィンしようだとかエアーズロックを拝みに行こうだとか考えないでくださいね!?」  まるで頭の隅から隅まで見透かされているような気がして、もはや言葉もない。  そのまま通話を切られるかと思いきや、 「あ、ちょっと待ってください」  と、何やら向こうで確認を取り合うような間があった。  嫌な予感がする。  こういう時、考えられる事態は一つしかない。  
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