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「ご先祖様の罪が遠縁の人間にはバレないよう、黙っててもらえているだけでも感謝してください。バレたらどんな非難を浴びせられるかわかりませんよ」
そこまで一息に言い切ると、やっとスッキリしたと言わんばかりに璃子の声色は柔らかくなった。
「というわけで天満さま。明後日は北海道の方まで呪詛返しに行ってもらいます。明日には東京まで戻って来られるよう、絶対に寄り道しないでくださいね」
絶対に、と二度も釘を刺してから璃子は通話を切った。
静かになった夜の景色の中で、天満はひとり空を仰ぐ。
遠い昔に、ご先祖様が犯した罪。
その罰として受けた呪いは、三百年経った今もなお子孫に受け継がれている。
一族の血が絶えるまで。
末代まで祟られたこの運命はきっと、天満が死んだ後もずっと続いていく。
「ま、嘆いても仕方ないか」
人は理不尽な不幸に見舞われた時、何かのせいにせずにはいられない。
何かを恨み、誰かを恨み、やがてそれは呪いへと繋がっていく。
「こういう時こそ、気晴らしに観光だよねえ。宇和島名物・鯛めしが食べられる店はまだ開いてるかなっと」
スマホで検索をかけながら、下駄の音を響かせて、天満は寝静まった街へと消えていった。
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