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「え、ちょっと。弥生さん落ち着いて」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、華奢な両手で涙を払う。
「いやいや、誤解ですよ。私はあなたの味方ですから。殺したりなんかしません。むしろあなたを助けたいと思っています」
「本当ですか?」
縋るような声は今にも事切れてしまいそうで、彼女の心がいかに追い詰められているのかが伝わってくる。
(これは重症だな)
人を信用できないくせに、誰かに助けを求めたがっている。
何者かに殺意を向けられているらしいが、相手の正体や理由はわからず、ただ逃げ惑うしかない。
呪いだ、と思った。彼女は確実に、呪いをつくりだしている。
「とにかく一度、あなたの身に起こっていることを整理したいです。どこかゆっくりできる場所で話しましょう。私を信じてくれるなら」
すでに疲弊している彼女は、こくんと力なく頷く。
きっと思考もうまく働いていないのだろう。
こんな状態の女子高生を連れ回すのは気が引けるが、『責務』を全うするためには仕方がない。
さてどこへ向かおうか、と頭を悩ませていると、そこへ弥生が助け舟を出す。
「あの……それなら道後公園に行きませんか? ここから歩いてすぐなんで。広い公園ですし、ベンチもありますから」
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