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「武藤家の倅よ。ここで死ぬつもりか? 自らの生み出した呪いに殺されたとあれば、それは自殺と変わらない。現世に戻ることは二度と叶わんぞ」
そんな時治の忠告にも耳を貸さず、兼嗣はその場を動こうとしなかった。
巨大な足は容赦なく彼の頭上へと迫る。
そして、
「兼嗣!」
今にも踏み潰されようとした刹那。
どこからともなく現れた影が、兼嗣の体を掻っ攫うようにして駆け抜けた。
直後、ドスン! と巨大な足が地面を踏みつける。
「あっっっぶねえぇー……」
冷や汗を流しながら、すんでのところで兼嗣を救い出したのは天満だった。
彼は危機を脱したのを確認すると、両腕で抱え上げていた兼嗣の体をペッと地面に投げ捨てる。
「おい金ヅル。いつまで凹んでるんだよ。このままじゃ殺されるぞ。しっかりしろ!」
天満は苛立ちを露わにするが、対する兼嗣はその場に転がったまま起き上がろうともしない。
「天満か……。余計なことすんなや。俺はここで死ぬんや。……いや、死ななあかんねや」
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