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「くそ。威力が足りてない……。おい兼嗣。そんな所で寝てないで加勢しろ! お前の撒いた種だろうが! 無駄にでっかい化け物を生み出しやがって」
霧の向こうで転がっている彼に、天満は怒号を浴びせる。
だが兼嗣は未だ失意の底にあり、目尻に溜まる涙を拭いもせずに言う。
「俺のことはもう放っといてくれ。あの呪いは、俺を殺せばそれで満足して消えるはずや。……俺は二十年前に死んでるはずやったんや。これ以上生き延びたところで、右京さんに申し訳が立たん」
「右京さんに申し訳ないってお前、それ本気で言ってるのか?」
天満はつかつかと下駄を鳴らして彼の元へと歩み寄る。
「右京さんは、お前を守るために命を賭けたんだぞ。それでお前が自殺なんてしたら、右京さんはどう思うんだよ。それこそ時治の爺さんが言っていた『無駄死に』になるんじゃないのか!?」
天満は兼嗣のそばで立ち止まると、今度は背後を振り返り、霧の向こうにいる時治を睨んだ。
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