第五章 オーストラリア QLD ブリスベン

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  「で、今はどこをほっつき歩いているんですか? どうせまた遠くまで観光に行っているんでしょう。もう何度も言ってますけど、勝手にふらふらと出歩かれるとこちらも困るんですよ。あなたには本家の人間としての責務があるんですからね」 「へいへい。用事を済ませたらすぐ東京(そっち)に帰りますよ。本当に人使いが荒いよねえ。心配しなくても、そんなに遠い場所じゃないから大丈夫……」  適当に受け流してその場を切り抜けようとしていると、そこへたまたま通りがかった欧米人らしき団体客の声が高らかに響く。 「Wow! That’s an Aboriginal boomerang! So cool!(わあ。あれがアボリジナルのブーメランね。かっこいいわ!)」  オーバーリアクション気味のジェスチャーとともに発せられた女性の声が、見事にスピーカーを通り抜けていく。  
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