第五章 オーストラリア QLD ブリスベン

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  「お待たせしました。前言撤回です。やっぱりまだ日本には帰らなくて結構です。本日はそちらに留まってください。丁度良い案件が発生しましたので」  ほら来た、と男は顔を歪めた。  こうなっては逃げるわけにもいかない。 「また面倒事に巻き込まれるのか。つくづく、この家の血筋に生まれたことを呪うよ。ていうか、さすがに海外なら大丈夫だと思ったのに……」 「たとえ南半球まで行こうと、運命からは逃れられないんですよ。観念して行ってきてください。今回問題になっている人物の写真と、簡単なプロフィールは後で送りますから」  先刻までとは打って変わり上機嫌になった璃子は、通話の最後に優しげな声で激励を送る。 「名探偵の出番です。永久(ながひさ)家の未来のためにも、しっかりと呪いを返してきてくださいね。天満(てんま)さま」  
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