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自殺か? と天満は頭を巡らせる。
と同時に、思わずその場へ駆け寄って、おもむろに車体の下を覗き込んだ。
「おい、何してる!」
車体と線路の隙間で横になっていた少女は、ハッと驚いた様子でこちらを見た。
「そんな所に入ったら危ないだろ。最悪死ぬぞ。早く出てこい!」
天満が少女の腕を掴み、力ずくで引っ張ると、彼女は思いの外すんなりと外へ這い出てきた。
そのまま線路横の地面にぺたりと膝をつき、怯えた目でこちらを見上げる。
その顔を見て、天満はピンときた。
肩まで伸びる清潔な黒髪。
長いまつ毛に縁取られた形の良い目。
儚げな印象を持つ彼女の容姿は、先ほど送られてきた『問題児』の写真と一致する。
(ああ。なるほどね)
合点がいって、肩を竦めた。
璃子の言っていた『問題児』とやらは、こうしてしっかりと問題行動を起こしているらしい。
しかし当の彼女は困惑した様子で周囲を見渡すと、
「あ、あの。私、なんでこんな場所におるんですか? さっきまで学校におったのに。一体誰が、私をここまで連れて来たんですか?」
訳がわからないという素振りで、訳の分からないことを口走る彼女。
天満はそれには応えず、至極落ち着いた口調で逆に尋ねる。
「失礼。『速水弥生』さんでお間違いないでしょうか?」
少女は不安げな表情のまま、
「そう……ですけど。どちらさんですか?」
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