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「きゅ、急にやって来て、いきなりそんな訳のわからんこと言うあなたの方こそ不審者じゃないですか? この名刺も本物って証拠あります? 実は探偵でも何でもなくて、別の目的があって私に近づいて……」
そこまで言ったとき、ハッと彼女はこちらの顔を見て固まった。
何かに思い当たった様子で、驚愕に揺れる瞳を向けてくる。
(……あれ。さっそくバレたか?)
内心ひやりとしたものの、しかし弥生の反応は予想とは全く異なるものだった。
「あなたが犯人やったんですね。私をここへ連れて来たのも。今まで何度も、私を殺そうとしとったのも」
「はい?」
見当違いの濡れ衣を着せられて、天満は呆気に取られる。
「わ、私が何をしたって言うんですか。そりゃ、今まで生きてきて一度も悪いことしとらんなんて言いませんよ。でも、殺すほどですか? 私、あなたと会った覚えもないのに」
言いながら、彼女はその綺麗な形の両目からぼろぼろと大粒の涙を零す。
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