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「おはようございます、『シラユキ』」
朝、私は姿見の前でニコッと笑った。
鏡の中の私もニコッと笑った。
『シラユキ』……私が付けた名前と、『アリス』が付けようとした名前が同じだった。なぜそんな名前なのか、気にならないと言えば嘘だけど……まぁ、研究一筋の私にとっては優先事項は下なので、『シラユキ』でも何でも、言わせておけばいいと思った。
「今日も一日、頑張りましょう!えいえい、おー!です!」
私は拳を突き上げ、気合いを入れる。
こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしいとは思うが、この真っ白い部屋には『私』しかいない。なので気にする必要はないのだ。
しかし……今の服は動きにくい。
昔は普通の服に白衣だったのだが、今は白衣の下に長めのカーディガンが増えている。なんでも、この施設に呼んでくれた人が「絶対に着ないとダメ」と言ったので、しょうがなしに着ている。
…………はぁ。腕が回しにくいなぁ。かと言って、白衣を脱ぐわけにはいかないし。なので私はそのまま従うことにした。
「『シラユキ』、あなたはここについて、どう思いますか?」
私はここに来た理由……鏡の中のもう一人の自分に意見を聞いた。
〈良いところだと思うわ。ねぇ、知ってる?ここには────〉
「ストップ。そこまでの情報は求めていません」
私は鏡の自分にストップをかけた。
しかし。
〈あなたは自分に満足してない。〉
──暴走。止めなきゃ。
〈ここに来て何がしたかった?〉
──それは、私が──
あれ?
声が。私の声は、どこ。
〈なんのためにここに来た?〉
こんな、犯罪者が集まる場所に、本当はあなたを連れて来たくなかった。
私はただ、『鏡の中のあなた』を悪意の無い場所に連れて来たかっただけ。
なのに。選択結果は、いつも、間違っていて。
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