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一番嫌いな音。
通知音。
──誰かの声。叱咤。叱責。恨み言。悪口。血の色をした、銃弾のような言葉。
わざわざメールにして送ってくる奴らがあとを絶たない。しかも全員、私が何も言わないのをいいことに、自分の名前をそのままに送ってくる。そっちの方が頭おかしいんじゃないの?
〈メールが来たみたいだけど読まないの?〉
読みません。
──ポロン。
ああ、また来た。
〈1件目──〉
「読まないで!!!」
私は急いで立ち上がり、PCの方へと向かった。
私は鏡に向き合わずに背中を向けてPCをカチカチと動かしている。だから、鏡から画面は丸見えだ。
そんな画面を開きっぱなしにしてた。当然『鏡の私』に内容を見られるわけだ。
ま、勢いよく閉じた今、そんなことはもう関係ない。
〈…………見たことないアドレスだったけど〉
「え?」
この研究所は全員001とか002とかそういうのばかり。なので、その他はありえないのだ。
〈外部の人間じゃない?とりあえず見てみなよ〉
「………………うん」
私は唯一信じられる彼女の言葉通り、恐る恐る開いてみた。
『ごきげんよう。突然のメッセージ、失礼するわね。
私はとある組織の代表をしています。この度、あなたの技術に感銘を受け、スカウトをするためにメッセージを送らせていただきました。
前向きな返答を期待しているわ。
なお、このメッセージは3分後に消去され、本体にはメールアドレスが登録されます。』
「………………」
え、これ、読み終わったら爆発しますとかいう、よくあるアレ?
〈……あー……えっと……どうする?〉
さすがにこれは怪しいと思ったのだろう。
でも、私は違った。
「返信する」
〈マジで?!……いいの?〉
私は返信ボタンを押した。
まだ3分経ってないけど、返信くらいはできるだろう。
「ターニングポイントになる──ううん、ターニングポイントにする!!」
私は『YES』と、返信した。
そして私は、あの悪意の壺から脱出することになる………………。
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