2人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に戻ると、『私』がこちらを見ていた。
「……私は、あなたみたいになれる?」
私は『私』に問いかける。
いつもニコニコしてて……いや、ニコニコの種類は違うが、いつも楽しそうで羨ましくて私もそんな風になりたくて。
『私』は答える。
〈もちろん!むしろ私はあなたから生まれた。ということは、あなたにもこうなる素質があったってワケ。そういうコトでしょ?〉
……言われてみれば、そうだ。
私はあなたで、あなたは私……。
『鏡』なのだもの。当然のこと。
それでも……あなたには、私に無いものがある。
あなたは私のように陰鬱にはなれなくて。私はあなたみたいな太陽にはなれなくて。
あなたは私を羨ましがることはないだろうけど、私はあなたが羨ましい。
「〈ならいっそ、入れ替ればいいのに〉」
……え?
私は思わず『私』を見た。
『私』は相変わらずニコニコしている。
そして、人差し指をこちらに向けた。
いや、こちらというのは間違っている。彼女は、私の後ろにあるPCを差しているようだった。
「……『実行しますか?』」
私は画面に映し出された言葉を読み上げた。
──何を?
怖い。怖いけど。でも、『私』はああやってニコニコして、これを指し示している。
そうだ。私はシラユキ。アリスもそう言ってたじゃない。『この子』と同じ名前でいられるなんて、幸せだ。
──そうだよ、私は幸せなんだよ!
私が『シラユキ』でいられることが、どれほど幸せか!ああ、やっとわかったよ!自分の研究の成果が認められることが、同一視されることが、どれほど幸せなことか!
『真実を映す鏡』……『シラユキ』!『シラユキ』は幸せでなくてはならない!
『私』は『シラユキ』!『私』は幸せでなくてはならない!
はは……ははははは!!あはははははははっ!!!
『シラユキ』、あなたはずっと答えを見せてくれていたのに、私は受け入れようとしていなかっただけなんだね!
ほら、こんなに頷いてくれてる!
私はもう一度画面を見た。
きっとこれは、幻を現実に変えるものなんだ。きっと、そうなんだ!
だから私は────
────『スイッチ』を押した。
最初のコメントを投稿しよう!