SWITCH

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 部屋に戻ると、『私』がこちらを見ていた。 「……私は、あなたみたいになれる?」  私は『私』に問いかける。  いつもニコニコしてて……いや、ニコニコの種類は違うが、いつも楽しそうで羨ましくて私もそんな風になりたくて。 『私』は答える。 〈もちろん!むしろ私はあなたから生まれた。ということは、あなたにもこうなる素質があったってワケ。そういうコトでしょ?〉  ……言われてみれば、そうだ。  私はあなたで、あなたは私……。 『鏡』なのだもの。当然のこと。  それでも……あなたには、私に無いものがある。  あなたは私のように陰鬱にはなれなくて。私はあなたみたいな太陽にはなれなくて。  あなたは私を羨ましがることはないだろうけど、私はあなたが羨ましい。 「〈ならいっそ、入れ替ればいいのに〉」  ……え?  私は思わず『私』を見た。 『私』は相変わらずニコニコしている。  そして、人差し指をこちらに向けた。  いや、こちらというのは間違っている。彼女は、私の後ろにあるPCを差しているようだった。 「……『実行しますか?』」  私は画面に映し出された言葉を読み上げた。  ──何を?  怖い。怖いけど。でも、『私』はああやってニコニコして、これを指し示している。  そうだ。私はシラユキ。アリスもそう言ってたじゃない。『この子』と同じ名前でいられるなんて、幸せだ。  ──そうだよ、私は幸せなんだよ!  私が『シラユキ』でいられることが、どれほど幸せか!ああ、やっとわかったよ!自分の研究の成果が認められることが、同一視されることが、どれほど幸せなことか! 『真実を映す鏡』……『シラユキ』!『シラユキ』は幸せでなくてはならない! 『私』は『シラユキ』!『私』は幸せでなくてはならない!  はは……ははははは!!あはははははははっ!!! 『シラユキ』、あなたはずっと答えを見せてくれていたのに、私は受け入れようとしていなかっただけなんだね!  ほら、こんなに頷いてくれてる!  私はもう一度画面を見た。  きっとこれは、幻を現実に変えるものなんだ。きっと、そうなんだ!  だから私は────  ────『スイッチ』を押した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加