仮面

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仮面

いつから僕は仮面をかぶって生きるようになったのだろう。明確な出来事があったわけではなく,ただ,こぼしたコーヒーがカーッペットに浸透していくようにじわりじわりと僕を蝕んでいったように思う。根本の僕の内気で繊細な性格に問題があったのだろうか。 小学校に上がった時のことである。田舎の学校故,同学年の生徒はわずか8名。僕を含め男子は3人。1人は内気で、もう1人(A君)(仮)は勉強も運動もできず、皆から嫌われていた。 気づけば僕は、ふざけ役にまわっていた。それがクラスにとって最もバランスのいい役まわりだと思ったのだろう。 必然,ふざけ役はクラス全員にとっても,先生方にとってもそうだった。僕はわかっていながら授業中わざと寝たふりをしたり、くだらない発言をしたりして先生に叱られることもあった。 また、誤解を恐れずに書くが、僕は何をやってもうまくいかないA君をよくいじめた。それはみんなのためだった。みんなが嫌っているA君を僕が代表していじめることでみんなに優越感を感じてもらうためだった。 それでいて、そのいじめはA。 僕はときにA君とよく遊んだ。別に毎日が毎日彼をいじめいてたわけではない。彼が宿題をやってこなかった時、給食の皿を割った時、誰でもわかりそうな問題を当てられても何分も無言でいた時…そういう周りが苛つきそうな出来事が起こった後にだけ彼をいじめた。みんながかつて彼に対して行なっていたいじめを再びさせないように。 僕は彼の精神が病んでしまわないよう気を配りつつ、みんなが満足するように行動した。 僕は埋め合わせをしようとしていた。せめて僕だけは彼と友達でいようと。 みんなからはただのふざけキャラと思われていただろう。 感情がぐちゃぐちゃだった。 あまりに早すぎたように思う。いち少年には到底耐えきれない仕事だった。ただの小学生がこなせる役ではなかった。 このときすでに僕の心は麻痺していたように思う。
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