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「龍成、早くしてちょうだい」
「んー」
「また遅くまでゲームしていたの?」
「んー」
「もう!お父様、忙しい中であなたの為に時間を作ってくださったのよ!」
「わかってるって」
「ああ、ほら、ここも寝癖が…」
「大丈夫だよ、自分でできるから。もう行けるよ」
「あらほんと。上手ね。じゃあ行きましょうか」
───あの人のことがあってから、より一層母さんは俺に甘くなったと思う。
エスカレーター式の学校で、勉強だけは厳しかったけれど、やりたいことは自由に、欲しいものは何でも、俺の望むことを叶えてくれた。
とは言え、子供ながらある程度は気を使っていた。
あまり迷惑をかけないように、母さんが悲しまないように、わがままの具合を見計らう。
母さんのあんな顔を、もう二度と、見たくなかったから。
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