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思い出を道標に⑭
「いいのよ。シンシア。私のことは気にしないで。親の存在が足枷になるのは、私にとって1番辛い事なの。あなたの思うように自由に生きなさい。ここを離れて他の地に赴くのも……」
「お母様と一緒がいいの。私たち、もう2人きりだもの」
マーガレットをこの地に残して旅立つなど、シンシアには考えも及ばない。
全部無くしてしまった自分に、唯一寄り添ってくれる母親をどうして見捨てられるというのか。
行けと言われても、自分が離れたくない。
「お母様、もうすぐキャラメルが出来上がるの。待っていてね」
「そう。あなたは頑張り屋さんね。若い子のお手本だわ。きっと町の娘さんがシンシアが作ったキャラメルをみんなで持って歩くようになるわ」
「そうなるといいけど」
マーガレットの背中をさすりながら、町の女の子たちがシンシアのデザインした紙袋を持ち歩く風景を思い浮かべた。
そんな日が早くやって来て欲しい。
恋を夢見る女の子たちが、持ち歩く……か。
(女の子が……、大勢で……)
一人一人それぞれに違う色とりどりの、恋を……持つ。
みんな違うもの。自分だけのもの。
(なんか、今……)
シンシアの中で一瞬の閃光が走った。
「いいアイデアが、閃いた気がする」
これからの販路を広げるための道が一筋。
煌めいたように思えた。
高々と掲げた目標は固まるばかりだった。
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