旭のお話

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今にも消えてしまいそうに弱々しく笑う立花に慰めの言葉が思い浮かばないのが、もどかしかった。 「初めてちゃんと話したのに、こんな話…。迷惑かけちゃってごめんね。もう、大丈夫だから!佐竹くんありがとう」 そう言って立ち去ろうとする立花の手を咄嗟に掴もうとしそうになるのを抑えて、そのまま腕を下ろした。 ただ、泣いている姿が脳裏に焼き付いて離れない。 これ以上、傷つかないでほしい。 そう思ったら自然と口から出ていた。 「話、話ならまた聞く。聞くことしかできねぇけど…」 「佐竹くんって優しいね……ありがとう」 立花は少し困ったような笑顔をして、じゃあ、と言って帰っていく後ろ姿を見送った後も俺はしばらくそこから動けずにいた。 情けねぇ…何やってんだよ俺……。 立花に触れた手が熱くて堪らないし、泣きそうな顔をしているのを見て、どうしようもなく胸が苦しくなったのは初めてだった。 「俺なら泣かせない…」 無意識に呟いた言葉に胸のざわめきが蘇って心臓の音がうるさい。 あぁ、ずっと感じてた胸のざわめきはきっとこれだ。 俺は立花のことが好きなのか。 だからこんなにも胸が苦しいって自覚した途端に失恋かよ……。 はぁーっとため息をついて空を見上げると、さっきまで青かった空はいつの間にか茜色に染まっていた。 立花の笑顔を思い出すと、顔が熱くなった。 今まで感じたことのない感情が湧き上がって、思わず手で顔を覆った。 これが、人を好きになるってことなのか……。 初めて知った感情に戸惑いながらも、不思議と嫌な気はしなかった。 恋とは無縁だと思っていた俺は、この気持ちをどう扱っていいのか分からず、しばらくは悶々とした日々を過ごすことになった。
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