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「佐竹くんって笑うとイメージ変わるねっ」
あれから立花とは挨拶以外の言葉を交わすようになった。
会話の内容は、たわいないもんで、初めはぎこちなかったのがだんだん普通に話せるようになってきて今に至る。
急にそんなことを言われて首を傾げた。
「あ?そうか?」
「うん、なんか、もっと怖い人だと思ってたの」
そう言われて、そういえば、いつも俺は大体不機嫌な顔をしていた事を思い出した。
「それは悪かったな」
「ううん、全然!」
立花は楽しそうに笑ってる姿が可愛いと思う。
あぁ、顔に熱が集まるのを感じたが立花は俺のそんな様子に気づくことなく話を続けている。
あの日、一輝と他の女子が抱き合っていたのは誤解だったらしい。
泣きつかれて慰めていただけで、本当に何もなかったようだ。
それを立花に伝えると安心したようにホッとして「大場くんのことが、諦められなくてまだ好きなの」と言って笑ってる立花を見ると、心が痛かった。
何も言えずにいると、俺の心情を察したのか、立花は慌てて、気にしないでと笑っていたが、その笑顔が無理してるように見えたのは気のせいじゃないはずだ。
一輝のことを話す立花は幸せそうで、でもどこか寂しそうな目をしていた。
俺じゃダメだと分かっていても、好きだという気持ちはどんどん膨らんでいく。
片想いっていうのは、こんなにも苦しいものなのかと実感した。
俺が好きだって言ったら、少しは意識してくれるのか?
でも、俺に好かれても迷惑だよな。
そう思うと、気持ちを伝えるなんて到底出来ない。そんなことばかり考えている自分に嫌気がさしてくる。
俺は立花に何をしてやれるんだろう…。
考えても答えは出なかった。
振り向いてくれるはずない恋をした夏のはじまり。
恋ってのはなんて難しいんだろう…
俺の好きな人には好きな人がいる。
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