旭のお話

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俺が思うに立花もその一人だと思う。 少し茶色がかったセミロングの髪に、白い肌、赤い眼鏡、おとなしめで目立つようなタイプではないけれど、清楚な雰囲気が男子受けしそうだ。 いつ見てもオドオドしてて自分からはみんなの輪の中に入るのは苦手そうな印象だ。 そういえば、一輝を図書室に迎えに行った時、一輝のことを焦げるような目で見ていた気がする。 まぁ、人の恋愛事情だからどうでもいい。 入学してから三ヶ月経ち、テストが近づく教室には勉強ムードが広がってる。 休み時間になると、頭のいい一輝の席の周りは勉強を教えてもらおうと人が群がってた。 俺は自分の席で、こいつらよくやるな、と思いながら他人事のように眺めていた。 この学校は進学校で、それなりにレベルが高いけど、俺は赤点さえ取らなければ良いと思ってる。 ふと視線を逸らすと、教科書を持ってウロウロしている立花が目に入った。 どうやらあの集団に入りそびれたらしく、少し離れた自分の席で立ったり、座ったりを繰り返してソワソワと落ちつかない様子で集団を見ている。 なんだ、あいつ…? …あぁ、集団に入っていけずに焦ってんのか。 五分以上も休み時間が残ってるというのに、ずっとあそこにいたら、絶対、あいつらには気づかれないだろ…。 しばらく観察したが一向に気づかれることも、立花が動き出す気配もないく ずっと、集団の中に入るタイミングを伺っている。 …挙動不審。 このままだと、いつまで経っても立花はあのままで、休み時間は終わるだろうな。 はぁ…。 立花の行動を見ていると、なぜかこっちがイライラする。
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