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あの時もすごく苦しそうに見えたけど、またあの時の表情をしている気がする。
たまに私と話していても一瞬、切なそうな顔をする時があるけど何かあるのかな…?
心配になって声をかけようとしたが、いや、やっぱり今はそっとしておこうと思い直し、読みかけの小説を開いた。
文字を追うだけで内容が頭に入ってこない。
うーん、どうしたものかな…。
しばらくすると、ガラッと扉の開く音がしてそちらを見ると、入ってきたのは佐竹くんだった。
こちらには気づかずにまっすぐ大場くんの方に向かって行く。
「一輝、掃除終わったぞ。別に待ってなくてもよかったのに」
そう言いながら佐竹くんは鞄を置くと、大場くんはさっきまでの表情とは違って、今まで見たことの無いような表情で笑う大場くんに、なんだか見てはいけないものを見た気がしてソワソワしてしまう。
ふわっと優しい笑顔で佐竹くんを見た。
「いいじゃん。一緒に帰ろうよ」
そう言って二人で仲良く話しながら出て行ってしまった。
あれ?なんだろう…。なんか…。
何か胸に少し引っかかった感じがしたけど分からないからモヤモヤする。
結局、その日、私はそれ以上本を読む気になれず、早めに家に帰ることにした。
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