優芽のお話

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私は今なにを見ているんだろう…。 目の前の現実に思考が追いつかない。 いつものように図書室からの帰り際、教室の前を通りかかったら中から声が聞こえてきた。 聞き耳を立てるつもりはなかったが、大場くんの名前と声が聞こえてきた気がして思わず立ち止まってしまった。 見たらいけないと思いつつも、身体の方が勝手に動いてしまう。 中を覗くと、大場くんと女の子が抱き合っている後ろ姿が見えた。 えっ…、大場くん彼女いたんだ…。 何かの間違いだよね…。 そう思い込もうとしたが、目に飛び込んできたその光景に疑いの余地はなかった。 頭が混乱してうまく働かないし、その場から動けなくなて、気づいたら涙が溢れていて視界が歪む。 「おい」 その声にビクッと身体が反応した。 誰かが近づいてくる気配がしたと思ったら急に手を掴まれて引っ張られたかと思うと、そのまま走り出した。 えっ?何が起こってるの? 涙で歪んだ視界の中、掴まれた手の先に誰かいるのが見えた。 佐竹くん…だ。 「な、なんで?佐竹くんが!」 私がそう叫ぶと、聞こえていないのかそのまま走り続ける。 なんで、佐竹くんがここに?どこに向かっているの? 頭の中は疑問だらけで、もう何が何だか分からない。 暫く走って、ようやく足を止めてくれた。
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