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そう思いまた口角を上げてみるが、やっぱりうまく笑えている気がしない。
「ううん、なんでもないよ」
「そうか?」
佐竹くんが首を傾げた。
「早く帰ろう!立花さんも一緒に帰ろうよ!」
そう言って、大場くんが佐竹くんの背中を押しながら歩き始めた。
「おい、押すなって」
佐竹くんが、迷惑そうな声を出しているけど、大場くんは全く気にする素振りもなく、どんどん前へと進んでいく。
二人が並んで歩いている後ろ姿を見ていると、不意に大場くんが振り返った。
「立花さんも、早く行こう!」
「う、うん」
笑顔で手招きされて、二人の元へ駆け寄った。
そして、大場くんが小さな声で呟いた。
それは、聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声だったけど、確かに聞こえた言葉。
”ごめんね"
大場くんは何に謝ったんだろう。
佐竹くんの事?さっきこと?それとも……
考えても分からなかったけど、その言葉を言われた時、何故か心臓をギュッと掴まれたような気分になった。
三人で歩く廊下はいつもと変わらない風景なのに、今日は何だか違って見える。
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