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立花はまた頭を下げると本を大事そうに抱え、カウンターの方へ向かって、そのまま図書室を出て行ってしまった。
自分のよく分からない感情に首を捻る。
っんだよ、なんか調子狂うな。
そのまま席に戻ると、一輝がこっちを見てにこりと笑っている。
「優しいね」
「別に優しくねぇよ。たまたまだ」
「ふふっ、そっか」
一輝を睨みつけても全く動じないどころか、嬉しそうな顔をするので舌打ちをしてそっぽを向いた。
「おい、もう帰んぞ」
「うん、ちょっと待って」
一輝はまだ残っていたいようだが、無視して帰り支度を始める。
もたもたと荷物を鞄に詰め込む一輝をずっと待ってたら、もう日が暮れかけている空は赤く色づき始めている。
「なんか、空が燃えてるみたいだね?」
「はぁ?なに詩人みたいなことを言ってんだよ」
呆れた顔で見ると、一輝はただ微笑んでいるだけだ。
「ほら、行くぞ」
「うん」
先に歩き始めると、一輝が慌てて追いかけてきて隣に並ぶ。
「ねぇ、旭」
「あ?何だよ」
「僕さ、嬉しいんだよ。こうやって旭と一緒に帰れることが!」
横目でチラッと一輝を見ると、夕焼けに照らされて綺麗な横顔が赤く染まってる。
「……あっそ」
素っ気なく返事をする俺を見て、あははっと声を出して一輝が笑った。
何がそんなに楽しいのか分からねぇけど、嬉しそうに笑っている姿を見るのは悪い気がしない。
「意味わかんねぇ。変なやつ」と言いながら、俺も少し笑ってやった。
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