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一週間ほど経った放課後、いつものように一輝が俺の席まで来て声をかけてきた。
「旭、今日みんなカラオケ行くみたいだけど行く?」
「いや、俺は帰る」
「そっか、じゃあ一緒に帰っていい?」
「一輝は行けよ。みんなおまえ来るの待ってんじゃねぇのか?」
「うーん、今日はいいかな。旭と一緒に帰りたいし」
そう言うと一輝はニッコリ微笑んだ。
「大体、俺と帰ったって何も楽しくないだろ」
「卑屈だなぁ〜。僕は楽しいよ。それに、旭は面白いしね」
「面白くねぇよ!勝手にしろ」
「じゃあ、行こっ!」
俺が呆れながら言うと、一輝は俺の腕を掴んで教室を出た。
「ちょっ!引っ張るなって!」
「あはっ!旭が遅いからだよ」
腕を振り払って、先を歩くと後ろからくすくす笑いながら追いかけてくるのを一輝を無視してさっさと下駄箱に向かうと、ちょうど靴を履き替えて出てきた立花が見えた。
俺に気づくとペコリと会釈をしてそのまま玄関を出て行こうとする。
「あれ?立花さんもう帰るの?」
後から来た一輝が声をかけると、振り返ってパッと明るく微笑んだ姿が目に入った。
「うん、テスト近いから家で勉強しようと思って……」
「そうなんだぁ、立花さん偉いね!そういうとこちゃんとしてるのって凄いと思うし好きだなっ!」
「え!?」
立花の顔が一瞬で真っ赤に染まり、口をパクパクさせている。
俺も一瞬ドキッとしたのと同時に胸がざわざわと音を鳴らす。
まただ、最近よく起こるこれは何なんだよ…。
分からないまま二人を見ていると、一輝は立花の様子には気づかずに「ん?どうしたの?」なんて呑気に言っている。
一輝の言葉は誰にだって言っているもので特別な意味はない。
ないと分かってはいるが⋯これはちょっと、いや、かなり誤解を招いてるんじゃねぇのか。
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