旭のお話

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旭のお話

察しの悪い俺でも分かる。 立花優芽が大場一輝が好きなことを…。 一輝とは幼稚園からの幼なじみで高校もクラスも一緒だ。 長身で爽やかな笑顔、頭も良くてスポーツも万能、それに性格もいいときてるからモテないわけがない。 バレンタインデーには、毎年必ず大量のチョコレートをもらってる奴だ。 俺はというと、体格には恵まれたが目つきも口も悪いうえに、無愛想らしく周りは誰も近寄りたがらない。 一輝と比べると、月とすっぽんぐらい差が開いている。 いや、比べるのもおこがましい。 「卑屈なやつだな。旭の笑った顔って可愛いのにねぇ。みんな知らないだけだよ」 一輝にはそう言われるが、俺の笑顔を見たいなんて物好きはいないだろ。 一輝は誰にでも優しい。 女子には特に優しい。 本人は無自覚で優しくしているから 一輝のことを好きな子はたくさんいる分、勘違いさせた子を一輝は知らない間に傷つけている。 そういう子を何人も見てきた。 昔は俺にやたらと絡んできて距離感バグってるし、変な奴だと思ってたが友達としては悪くないやつだ。 だから、人が良すぎてたまに心配になる。 無自覚だからこそ顔を含めて悪い。 人たらしというのは、こいつのためにある言葉だ。
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