手指の美しさ

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手指の美しさ

 加奈子は3年前に両親を交通事故で無くし、姉の華子と二人暮らしだった。    姉の華子は名前の通り華やかで美しい顔立ちをしていた。  ふるまいも華やかであったし、周囲にも常に異性同性を問わず、沢山の友人に囲まれた生活をしていた。  頭脳も明晰で両親の残してくれたお金で医大に進んだ。  医大は加奈子たちの住んでいる郊外からは大分離れていたので、華子は医大の近くに引っ越していた。  そんな姉がある時殺害された。    事故や、自殺でないのは明らかだったので、警察が捜査中なのだが、犯人の目星は付いていなかった。  ここ最近、この辺りで同じような殺人が増えていた。  加奈子は姉が亡くなった後、一人になってしまったが、お金だけは潤沢にあったので生活に困ることはなかった。  姉がいなくなって寂しかったが、元々特別仲の良い兄弟でもなかったので、姉がいる時には反対されていた美容整形をしてみた。  でも、もともと臆病な性格なので、目を一重から二重に変えてみただけだった。  整形したことがばれるのも嫌なので、学校も転校した。  姉の住んでいたワンルームマンションの近くにこじんまりとしたマンションを買い、そこに住んだ。  そしてお嬢様ばかり集まる都心の女子高に編入した。  都心の女子高はお嬢様校だけあって、皆、大人しめな人が多かったが、加奈子は自分が田舎から来たことを皆が知っているような気がして、気後れして、なかなか友達もできなかった。  そんなある日、同じクラスの紗栄子が話しかけてくれた。 「ねぇ、加奈子さんってうちの学校にもう馴染んでいるのね。」 「え?そうかしら。」 「うちの学校は花嫁修業目的で来ている子が多いのよ。だから綺麗な顔立ちをしている人ほど質素な格好をしているの。」 「私は・・綺麗なんて言われたこともないわよ。」 「あら、お化粧したことないの?」 「仕方も分からないわ。」 「ふ~~ん。じゃ、今日これから私の家に来ない?」  紗栄子の家は豪邸だった。  紗栄子の部屋に入るとさっそく、 「ね、お化粧私がしてもいいかしら?」  と、聞かれ、有無を言わさず、加奈子に化粧を始めた。 「眉毛も、整えて良い?」 「え・・えぇ。みんなお化粧できるの?」 「もちろん。中学生だってできるわよ。学校では大人しくしているけどね。さ、できたわ。」  加奈子が鏡を見ると、そこには華子がいた。  黙ってしまった加奈子を見て、紗栄子は心配そうに 「ごめんね、気に入らなかった?」  と聞いた。 「いえ、でも、姉にそっくりなので驚いて。」 「お姉さんとは似ていたの?」 「これまでそう思ったことはなかったわ。」 「でも、姉妹なんだから骨格は似ているんじゃない?」  そう言われてみればそうなのかもしれない。  加奈子は紗栄子とそのまま街に繰り出してみた。  街を歩くと皆振り返る。 「紗栄子さん、綺麗だからみんな見ているわ。」 「いえいえ、加奈子さんを見ているのよ。よくみてごらんなさい。」  加奈子は信じられないような感覚で街を歩いていた。  その時、 「華子?」  と、声をかけられた。
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