このダンジョンに入った者たちは

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このダンジョンに入った者たちは

 深呼吸して息を整える。  よし、大丈夫。  ここからは小走りで。  ノックもしないで、私は勢いよくドアを開けた。 「聞いて! すっごい情報つかんじゃった!」 「おわっ!」  ベッドに腰掛けて仕事道具の手入れをしていたらしいテオが驚いてこっちを見る。 「っちょ! エレノア! ノックしろって、いつも言ってるだろ」 「そっちだって、鍵くらい掛けなさいっていつも言ってるでしょ? 全く、不用心なんだから。貴重品の管理を任されてる私の身にもなってよねっ」  私はやれやれとため息を吐いた。こういうところは本気で呆れてしまう。  けど、また高圧的な口調になってしまった。嫌われていないだろうか? 「で、なんだよ。情報って」  心配したけど、テオはなんでもないように言った。  ほっとして、私は部屋のドアを閉める。 「そうそう! こんなこと言ってる場合じゃなかったんだった。聞いてよ!」  私はテオの近くに腰を掛けた。ぽふん、とベッドが揺れる。  テオは微動だにしない。 「この街の近くのダンジョンにすっごいお宝があるって聞いたの」 「こんなところにか?」 「そうなの! あまり噂にもなってないようなところらしくてね。まだお宝が残ってる可能性が高いってわけ」 「へー、相変わらずエレノアはスゲーな」 「スゲーなじゃないでしょ。情報収集は私に任せっぱなしなんだから。それでもトレジャーハンターなの? 私と組む前はどうやって生きてたのよ?」 「いいだろ。今はエレノアがいるんだから、困ってないわけだし」  にっ、とテオが笑う。その顔が子どもっぽくて可愛い。 「そ、そう? それならいいんだけど。感謝しなさいよねっ!」  ふん、と私は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。唐突にそういう顔をするから困る。 「じゃあ、明日そこに行くってことでいい?」 「エレノアが調べてくれたなら大丈夫だろ」  私の言葉にテオが頷いた。  私は心の中でガッツポーズする。これで第一関門クリアだ。 「夜更かししないでちゃんと寝なさいよ」 「わかってる。おやすみ」 「おやすみ」  私はテオの部屋を出る。そして、ため息を吐く。  トレジャーハンターとして組んだ私とテオが二人で旅を始めてから、一年近く経つ。それなのに、未だに宿屋で同じ部屋に泊まったことがない。お金がもったいないからとか、それとなく一部屋でいいとか言ったことはある。それでも、テオが俺が出すからとかなんとか言ってなかなかなし崩しになんてことにはならない。  抜けているようでいて、しっかりしているというかなんというか……。  つまり、なかなか関係が進展しないってことだ。  アイツは、この私の気持ちに全く気付いてないってこと!
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