このダンジョンに入った者たちは

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 え、係員さんがいるってことは、まさか今までのやりとりって全部見られてたの?  めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。  だというのに、テオは全く気にしていないみたいで、 「ありがとうございます。俺たち結婚します」 なんて、照れくさそうに笑いながら答えている。  そして、 「な、エレノア」  私の手を握る。  ああ、もう!  いきなり結婚なんてそこまで考えてなかったんだけど! 「しょうがないわね。結婚、……してあげるわよ」  小さく言いながらそっぽを向くと、 「きゃ!」  急にテオが私をお姫様抱っこした。  そして、走り出す。 「じゃあ、俺たち教会に急ぎますので! ありがとうございましたー!」 「あ、ちょっと待ってください! せっかくカップル成立したので記念の写真を!! それに、あのドアを自力で開けた前例なんてないので新しい事例として宣伝に使いたいんですがー!」  後ろから係員さんの声が追いかけてくる。  宣伝に使われる!?  そんなの、絶対にやめて欲しい!  これは、逃げるしかない。 「テオ! 急いで!」 「そうか! エレノアもすぐに結婚式挙げたいんだな! 俺もだよ!」 「ち、ちがっ……!」 「……そうか。やっぱり俺なんかと結婚するのは嫌、だよな……」 「だから、それも違うって!」  単純に写真なんか撮られるのが恥ずかしかっただけなんだけど……。 「あ、もしかして、トイレか! それなら尚更急がなきゃな!」 「………ばかっ!」  もはや否定する気にもなれない。  なんで、こんなデリカシーのない男を好きになってしまったんだろう。  だけど、 「さっきエレノア、お宝なんかないって言ってたよな」 「そうね」 「あったよ」 「は?」 「お宝はあった」 「どこによ」 「ここだよ」  怪訝そうな私にテオははっきりと答える。 「エレノアが俺にとってのお宝だってこと」 「バカ!」 「なんだよ、いい台詞だと思ったのに」 「ほんと、バカじゃないの? もう!」  全く、ストレートすぎて恥ずかしいけど……。  やっぱり私は、こういうテオが好きみたい。 「ほら、そんなこと言ってないで急ぎなさいよ」  私はそう言って、テオにぎゅっと抱きついたのだった。
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