第三章 決意の女

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インターホン越しに『花井さん、お荷物でーす』と聞こえた声に応対し、配達員から荷物を受け取った。 伝票の宛先を見ると実家の母からだった。段ボールを開けてみると其処には今が旬の野菜が沢山入っていた。 そして中に入っていた手紙を取り読むといつもと同じような【元気ですか?】【ちゃんと食べていますか?】【家で採れた野菜を送ります】なんて内容だった。 私の実家は田舎にあって、父は普通のサラリーマンだったけれど母が趣味で農業を嗜んでいた。 昔からありとあらゆる野菜を育て、家庭の食卓に上る料理に使われる野菜の殆どは母が作ったものだった。 そんな環境から私は小さい頃から農作業というものが身近にあり、遊びの延長で泥だらけになって母の手伝いをしていた。 流石に年頃になってからは外見を気にするようになり土いじりはしなくなったけれど、そういう作業が嫌いという訳ではなかった。 故に休みの度に泥だらけになり汗をかきながらも仲良く母の手伝いをする父の姿を見ていいなと思い、気が付けばそんな男性が理想になっていた。 もっとも大学進学と共に上京し、都会という環境に馴染むために着飾った私を外見で決めつける男たちにその理想のタイプを見つけることは出来なかった。 そんな中で出会った三好さんはまさに理想のタイプだった。 明るくて優しくてリーダーシップを取るような頼りがいがあり、何よりもクリーンスタッフとして汗水垂らして働く姿にときめいた。 (本当に好き……だったんだけどな) 母が送ってくれた野菜を手に取りながら、何故か涙が零れて仕方がなかった。
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