第一章 割勘の女

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同期で友人の島田(しまだ)エリ子と藤澤郁美(ふじさわいくみ)と私の三人で合コンをしたのはもう一年も前の事。 その時に知り合った営業一課の三好拓也(みよしたくや)となんとなく付き合うようになってからも一年ほど経つ。 初めは我が社ではエリートと呼ばれる営業一課のクリーンスタッフという肩書目当てで付き合い始めた三好さん。 『付き合ってくださいよぉ』といつもの如く積極的にアプローチすれば『俺でよかったら』と、これもいつも通りの答えが返って来て晴れて恋人同士になったというのに…… 「合計2500円だから1250円ずつね」 「……はぁ」 食事に行けば割り勘。 「休憩3000円か……じゃあひとり1500円ね」 「……はぁ」 ホテルに行けば割り勘。 (──って、なんで何でもかんでも割り勘なの?!) 私は彼女なんだよね?! 紛れもなく、正真正銘三好さんの! 彼女なら気持ちよく奢ってくださいよ! ──そう大声で言いたかったけれど、彼は滅多に出会えない優良物件。 こんな小さなことで愚痴って逃してたまるかという半ば意地もあって割り勘男の三好さんと付き合い続けていた。 本来なら最初のデートでフッてしまうタイプの男だ。 お金に細かい男ってどうなの? 結婚してからもケチでちょっとした買い物でもグチグチ文句をいいそう。 そういう未来が見えてしまうから、いくら希少な優良物件とはいえこのまま付き合って行くには不安も不満もあった。
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