第一章 割勘の女

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(あーあ。新しい男、探そうかなぁ) そんな考えが何度も頭に浮かんでは消えて行く中、守銭奴な彼でもどうしても完全に吹っ切れない訳があって…… 「美佳ちゃん」 「!」 仕事が終わり作業服から私服に着替え更衣室を出たところで三好さんに声を掛けられた。 「今から帰り?」 「あ……うん。三好さんは今、終わったの?」 「そう。今から帰り支度」 汚れた作業服を身に纏い、首から下げたタオルで額を拭きながらにっこり笑っている三好さんにドキドキと胸が高鳴った。 (はぅ~~~やっぱり作業着姿の三好さん、カッコいいっ!) そう、私は見かけが派手で如何にもチャラチャラした優男が好きそうに見られるのだけれど、本当は、本当に好きなタイプは重労働をものともしないガテン系男子が好みだった。 作業着……汗だく……白いタオル……ピンポイントで好きな物を身に纏っている仕事姿を見た時からすっかり三好さんの虜になっていた。 だからこそその見かけの好きと中身、性格の不満が上手く折り合いが付かずに悩んでいるということなのだった。 「よかったら晩ご飯、食べに行かない?」 「……あ」 「ん? 都合が悪かったらいいよ」 「ううん。行こうか」 「了解。じゃあ着替えて来るからロビーで待っててくれる?」 「うん」 食事に誘われるのは嬉しいけれど、また割り勘なのかと思うと少し躊躇った。 最近では別に割り勘が嫌という訳じゃないという気持ちになって来ている。ただ、なんだか三好さんにとって私は本当の彼女じゃないみたいな扱われ方が不満というか…… (寂しい、とか思ってるんだ) 割り勘という制度によって三好さんとの関係が上辺のもののような気がして嫌なのだ。
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