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ロビーで三好さんを待っていると入社したての頃に合コンした相手のひとりだった田辺さんが声を掛けて来た。
「あれ花井ちゃん、こんな処で何してんの? 誰かと待ち合わせ? じゃなかったら飲みに行かない?」
「ごめんなさい。待ち合わせしてる」
「何、最近ずっと付き合い悪いね。本命の彼氏、デキちゃったの?」
「本命っていうか……まぁ……つきあっている、かな」
「そうなの? ざーんねん。フリーになったらまたオレと遊んでよ」
「考えておくね」
田辺さんは営業二課──いわゆる顧客確保をメインとする営業の人で、見た目は万人受けしそうなルックスの持ち主だった。
その見た目通りの遊び人で、本命の彼女は作らないという人で私も気が向いた時に遊んでもらったひとりだった。
(ああいう人、結婚には向かないよね)
まぁ、本人が最初から公言しているから泣く女の子は少ないとは思うけれど。
「お待たせ」
「!」
考え事をしていると着替えを済ませた三好さんが息を弾ませながらやって来た。
「ねぇ、さっき田辺と話していなかった?」
「え?」
「遠目からでも解った。あの派手な形。何か言われたの?」
「別に何も」
「そう? あいつには気をつけないとダメだよ。よくない噂あるから」
「……うん」
(何よそれ。ひょっとしてやきもち妬いているの?)
そんな一端の彼氏みたいな振る舞いをされると益々戸惑う。
(彼女だと思うならそれらしく扱ってよ!)
なんて、こんな風に考える私はわがままなのだろうか。
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