小さいオジサンとぼく

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1.  ……因幡(いなば)くん、因幡憲司(いなばけんじ)くん。  部屋のどこからかぼくの名前を呼ぶ声が聞こえた。 「えっ?」  ベッドに寝ころがって友達から借りたマンガを読んでいたぼくは驚いて飛び起きた。それから部屋の中を見回す。誰もいない、というかいるはずがない。ここはぼくの部屋だ。  ……なんだ、気のせいか。  ぼくはまたマンガの続きを読み出した。    ……因幡くん、ここだよ!  さっきよりはっきりした大きな声。 「え、ちょっと、なに?!」  ぼくはマンガを放り投げベッドから起き上がると、もう一度あたりを見回す。すると……。ノートやら教科書が乱雑にのった机の上に10センチくらいの人が立っていた。ぼくに向かって手を振っている。 「……ウソだろ」  その人物は見た目50才くらいでちょっとハゲててメガネをかけ、グレーのスーツを着ていた。見るからに普通のサラリーマン……大きさ10センチだけど。ぼくはオジサンをまじまじと見つめ言葉を失う。
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