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翔優との夜
残りの二日間は観光に充てられた。
エッフェル塔、凱旋門、美術館にヴェルサイユ宮殿など、有名どころをまわる。
獅堂が言う。
「フランスはなかなかに治安が悪いんだ。街中でひったくりがあるし、美術館にも高級ブランドに身を包んだスリがいる。二人は俺と離れないように。翔優も、要芽と離れないように気をつけて」
川沿いを車で走ると、1人用のテントがところ狭しと並ぶ。
仕事も住まいもない、移民のテントだ。
彼らは盗みをしないと生きていけない。
美術館に入ると、かなりの人がいた。
獅堂はまだいいとしても、僕らのような貧弱なアジア人の子どもはカモられそうだ、と藤波は思った。
すると、翔優が手を繋いできた。
「まあ……君はぼんやりと絵画を見てて誘拐されそうだから、手を繋いでおく方が無難かもね」
獅堂は笑ってこっちを見ている。
「何がおかしい」
「要芽にも、人の心があったんだな、って」
「フランスに来てまで、面倒はごめんなんだよ」
♢♢♢
その日の夜、翔優はまたベッドに入って来た。
「……君も強情だね」
翔優の手が、そっと要芽の腰骨に乗せられた。
「……そんなにしたいのかい……」
「はい……」
「……別に僕が頼んだんじゃないよ。これは君のわがままだ。勘違いしないで」
「はい」
「じゃあ、好きにすればいいよ」
あの糞教師のように子どもにやらせて喜ぶ趣味はないし、そもそも身体の快楽にも興味は薄い。
藤波は、翔優のことを不憫に思ってはいるが、この行為を好意的に受け取るほど愛情馬鹿ではないとも思っていた。
ただ、翔優の欲情にさらされたまま過ごすのが面倒だっただけだ。
翔優は見た目こそ可憐でみんな騙されているが、最近は、藤波を見るときは男の眼で見ている。
今は立場や力の差で控えめだが、これで体格が大きくなったらわからない。
まして、彼は性暴力を受けて、彼の中の常識が変わってしまっている。
彼の過去を知る前から、いつかはこうなるかもしれない、と思っていた。
翔優は藤波のズボンを下ろすと、そっとそれを持ち上げて舐め始めた。
たっぷりの唾液で包んで、唇と舌を絡ませていく。
不思議とその姿は、箏を演奏しているときの印象に近かった。
翔優の表情に、恍惚が見てとれる。
陰茎自体にそんな価値は無い。
が、そこに仮想の世界を見て、すがりたいものがあるんだろう。
翔優の荒く熱い息がかかる。
翔優は口に含みつつ、手でしごき始めた。
下半身に刺激が走る。
「……翔優、そのやり方は、先生から教わったのかい?」
「……はい……」
一つ一つ指導されて、健気に習う幼い翔優の姿が思い浮かんだ。
翔優の手が激しく動く。
「……翔優、もういいよ、出そうだから」
そう言うが、翔優は辞めない。
体の反応のままに出した。
翔優はそれでもまだ離さず、僕のものをペロペロ舐めてはキレイにしようとしていた。
「……こんな擬似的な生殖行為に意味があるとは思えないけど」
翔優がようやく離れて、藤波は自分のものをしまった。
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