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翔優の新しい生活
翔優は要芽におやすみの挨拶をして部屋に戻り、ベッドに横になった。
♢♢♢
要芽さんが、決して愛情を込めて頭をなでたわけじゃないのはわかっているけど、それでも撫でてもらえたことが嬉しかった。
今まで、要芽さんから求められたことは一度もない。
嫌がられても、押し切れば要芽さんは相手をしてくれる。
要芽さんはこの先、彼氏も彼女も作らないだろう。
ならば今までの関係でも構わないと思っていた。
でも、橘さんと那央さんの様子を見てると、とても羨ましい……。
あんな風に、要芽さんに微笑みかけられたら……。
ため息が出た。
フランスに行ったとき、そばに要芽さんが寝ていて、こんなことはもう人生で最後だと思った。
要芽さんと仲良くしたかった。
抱きしめてほしかった。
勇気を出して、布団に潜り込んだ。
怒られるかもしれないし、日本に帰ったらもう絶交されるかもしれない。
それでも……要芽さんに対する気持ちは抑えきれなかった。
強引に要芽さんの下半身に奉仕したのも、それ以上に要芽さんに近づく方法がわからなかったからだ。
それは、今でもそうだ。
身の回りの世話をし、ほぼ無理矢理に体の関係をもつ。
体は気持ちいいが、要芽さんに愛されてるとは思わない。
最近、ようやく要芽さんが気持ちよくなってくれるのが幸いだった。
これだけセックスをしても、いまだに要芽さんの洗濯をする時にパンツを手にするとにおいを嗅いで一人ですることがある。
自分が人としても、まして使用人として駄目なことをしていることはよくわかっている。
でも、他にどうしようもない。
要芽さんに忠告された時、要芽さんからは愛情が注がれないことは自分も受け入れた。
だからと言って、他の誰かでは全く意味がない。
二人だけの生活で、満足ではないけど自分の欲望のギリギリだった。
そこにあの二人が来て、最初は心配だったが、大丈夫そうだった。
自分が人間を保てそうで安心した。
翔優は、那央が橘に抱きしめられ、愛を囁かれるところを思い浮かべた。
自分と藤波を重ねてみる。
藤波にそっと抱きしめられて、藤波からキスをされたら……。
一度だけでいい、そういう甘い夢を見たかった。
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