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もう、ここまで来たワケだし。いまさら遠慮も何もないだろう。
オレは屋敷の中へ足を踏み入れた。
のしのしと廊下を行く巨大な犬の後について歩く。
少年は、オレの数歩後ろにいた。
泥まみれのズボンのケツ、見られてんだろうか……と思えば、あらためて恥ずかしい。
「それ……洗いますか」
そう言われ、オレは思わず、立ち止まって振り返ってしまう。
いきなりに足を止めたものだから、少年との距離が、はずみでグワンと近づいた。
「あら…うって、いやいや、そこまでは…」
さすがに申し訳なさすぎるだろ。
そもそも、この子には何の落ち度もないんだし。
オレが勝手にKeelなんかしちまっただけで。しかも……犬への号令で。
恥ずかしさとないまぜになった恐縮する気持ちで、マゴマゴと言い淀んでいると、少年が静かに「別に……平気ですよ」と続けた。
「小一時間もあれば洗って乾きますから。うちの洗濯機はパワーあるので」
パワー?
「え、なんか普通のと…ちが、う?」
「ええ、毛布とかタオルとかの大物がなにかと多いので、この前、別に新しく買ってもらいました」
別に、新しく?
……おおもの。
って――
犬用か?!!
犬用の洗濯機で洗うつもりか、オレの服?!!
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