春光乍洩 out of nothing at all

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 そんな感じで――  オレは、あのデカい家の留守番を任された。  ありがたいことに「佐竹さん付き」で。  うん。半社畜地方公務員には、あんなデカい家、掃除すらママならないからな。  要は、ムギの散歩ほかの面倒を見る代わりに、一年間、食事付きの無料施設で生活させてもらえる……っていう、ウソみたいなうまい話。  ちょうどマンションの更新時期だったから、ありがたさもひとしおだった。    隆督の帰国の日は、ちょうど代休日で――ってか、無理くり代休にしたワケなんだが――  俺は車を借りて、空港まで隆督を迎えに行った。  たまにカメラ通話とかはしてたけどさ。  帰ってきた隆督は、なんていうか……ますますカッコよくなっていやがった。「オマエはB⚫︎Sか? 韓流スターか?」って感じ。  化粧してるってワケでもなさそうなのに、ピッカピカのお肌にクッキリとした眉。  ほんのり血色のキレイなくちびる。  スラッと伸びた手足。まっすぐな首筋。  隆督がゲートに姿を現した瞬間、遠目でも、「輝き」みたいなのが見てとれた。 *
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