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ちょっと社畜なオレの日常が
運命。
そんなモノ信じるなんてバカだって。よく友達に笑われたっけ。
でもさ、ホントにオレ、信じてきたんだ。
運命の相手が、いつか現れるかもって――
それは、ほんのつい、この前までのコト。
そう「信じてた」ハズだった。
いつからだろ。
そんなことさえ忘れちまったのは――
元々、小さな頃から、どっちかというと「ガキ大将キャラ」だった。
そんなオレのダイナミクス性がSubだなんて、自分自身、信じられなくて驚いた。
家族は、ちょっと田舎の、いたって標準的な家庭で。
全員がUsual。親戚にも、たぶんDomもSubもいたことがない。
母親はただオロオロ戸惑って。父親は無関心――なフリを貫いた。
実質上の家長だった祖母は、オレのコトを、まるで「カタワもの」とでもいう風に眺めやった。
しかたないさ。
むかしむかし、古くは村上水軍に連なる家系だってことを、プライドの所在にしてたみたいな人だったから。
そうやって、ちょっとずつ「居づらさ」は募り、大学進学を機に、オレは地元を離れた。
盆か正月、年に一回だけは帰省する。
そうやって、オレは家族との関係の落としどころを探った。
奨学金と研究費を必死にかき集めて、やっとこさっとこ修士まで行って。
その後はもちろん、地元には帰らず就職した――
大安泰な地方公務員。
東京隣県の政令指定都市の専門職だ。
それがオレ、旗手元気。今年で二十六歳になった。
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