ちょっと社畜なオレの日常が

1/1
93人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ

ちょっと社畜なオレの日常が

 運命。  そんなモノ信じるなんてバカだって。よく友達に笑われたっけ。  でもさ、ホントにオレ、信じてきたんだ。  運命の相手が、いつか現れるかもって――  それは、ほんのつい、この前までのコト。  そう「信じてた」ハズだった。  いつからだろ。  そんなことさえ忘れちまったのは――  元々、小さな頃から、どっちかというと「ガキ大将キャラ」だった。  そんなオレのダイナミクス性がSubだなんて、自分自身、信じられなくて驚いた。  家族は、ちょっと田舎の、いたって標準的な家庭で。  全員がUsual(ふつう)。親戚にも、たぶんDomもSubもいたことがない。  母親はただオロオロ戸惑って。父親は無関心――なフリを貫いた。  実質上の家長だった祖母は、オレのコトを、まるで「カタワもの」とでもいう風に眺めやった。  しかたないさ。  むかしむかし、古くは村上水軍に連なる家系だってことを、プライドの所在にしてたみたいな人だったから。  そうやって、ちょっとずつ「居づらさ」は募り、大学進学を機に、オレは地元を離れた。  盆か正月、年に一回だけは帰省する。  そうやって、オレは家族との関係の落としどころを探った。  奨学金と研究費を必死にかき集めて、やっとこさっとこ修士まで行って。  その後はもちろん、地元には帰らず就職した――  大安泰な地方公務員。  東京隣県の政令指定都市の専門職だ。  それがオレ、旗手(はたて)元気(げんき)。今年で二十六歳になった。   
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!