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それから数日、多くの貴族がラルフを避けていた。それは以前のような"汚れた生き物"としてではなく、"正体不明の人"としてラルフを避けていた。
それはガーリンソンとグラナスも例外ではなかった。
彼らはラルフと目を合わすと、ラルフを睨みつけるだけにとどまった。
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「なあ、ラルフ、聞いてくれよ。ー」
そんな二人を見てナイトハイトは以前の活気を取り戻した。
ナイトハイトは実感した。
あの日、震えながら踏み出した一歩は確かに意味があったんだ、と。
あの日、あの運命的な日、ナイトハイトは友達、ラルフのために勇気を振り絞った。文字通り、雑巾を絞るように。それは彼にとっては未曾有の境地であり未知の恐怖そのものであった。
しかし、だからこそ、それによって新たな未来が切り開かれたのだ。
「今日もまだ尋問は続いててさ」
「何て聞かれたんだ?」
「『その一緒に戦ってくれた子は何て言うの』って。ガーランやグラナスのことについて聞いてきたかと思えば今度は君だよ。もう辟易したよ。そんなのどうだっていいだろ?だってもう終わったことだし。…でもまあ埒が明かないから君の名前を教えたよ、ラルフだ、って」
ナイトハイトは額にかかった前髪を耳にかける。(ラルフはその仕草を見て、少しどきっとしてしまった。)
「そしたら急に黙り込んでね。しばらくして親はこう言った。
『ラルフ君が一緒に戦ってくれたんだね』
なんかしんみりしてたよ。おかしいだろ?そう思えばまた尋問官に戻って『ラルフ君は怪我したのか?彼は大丈夫なのか?』って。
本当に慌てん坊の親だよ」
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