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プロローグ
「ねぇ、ねぇ。誰がこの世界を創ったか知ってる?」
「うん、知ってるよ」とラルフは迷わず言った。
神様だよ。
「じゃあさ、神様はどうやって世界を創ったと思う?」
キャシーはラルフを試すように質問した。
どうやって?「そんなのわかるわけないじゃん。神様は神様なんだから魔法かなにかの特別な力が使えたんだよ」
「うんうん。そうだね」
キャシーはラルフの答えに満足していた。
「君はその特別な力とやらを使うことができないの?」
「できないよ、当たり前だろ。人なんだから」
ラルフはだんだんキャシーに苛ついてきた。キャシーがにこにこ笑うのもそうだし、自分がキャシーを見上げる形を取らされていることにも苛ついた。
「なに偉そうにしてんだよ。お前たちは翼があるだけ、それだけの違いで人を馬鹿にするなよ」
「ごめんよ。怒らせるつもりじゃなかったんだ。ただ一応聞いておきたくてね」
天使キャシーはラルフを宥めるように謝った。
ぱさり。翼がゆっくりと動く。
「じゃあ、ひとつ君に秘密を教えてあげようか?」
「何さ」
ラルフは秘密という言葉を聞いただけで興味がそそられていたが、それを隠そうと仏頂面で尋ねた。
「私たち天使はね、神と神が持っていた特別な力は別々だと考えているんだよ」
ラルフはよく理解できなかった。「どういうこと?」さっきまで怒っていたことも忘れて聞いた。
「つまりさ、神には特別な力があったわけじゃなく、神が用いた道具が特別だったんじゃないかってことだよ」
そう…。ラルフは結局理解できなかった。その何が秘密なんだ?そんな予想をして何になるんだ?
ラルフはキャシーが教えてくれた秘密にがっかりした。
神様から直接魔法が生み出されるか、道具から魔法が生み出されるかっていう違いだろ?
どっちだっていいや。
「つまり神はただの生物で、私たち天使はその特別な力が宿る道具を探しているのさ」とキャシーは言った。
ラルフは耳を疑った。
何だって?神様が生物?彼は混乱した。
キャシーはついに変なことを言い出した。
神はただの生物で。
ラルフは、口いっぱいに食べ物を詰め込まれたかのように、その考えをうまく飲み込むことができなかった。頬張った食べ物は噛むことも飲み込むことも許されない。
天使たちは間違えていると思った。今までそんなこと誰も言ってないぞ、そんなわけあるか。
…
何か嫌な予感がした。
今のキャシーは何か違う。相変わらず子供のような話し方だけど、目つきが違って見えた。キャスは今僕を見ているようで見ていない。遠くを見ているようだ、とラルフは感じた。
キャシーは最後に、私たちはその特別な力を持つ道具を"聖杯"と呼んでいる、と言った。
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