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今日から竜之が用意したマンションに移り住む。ただ住むと言っても長くて5日くらいの話だから荷物は最小限にした。
マンションはカードを当てないとエレベーターが動かず、カードをかざすと自動で階に到着する仕組みになっていた。しかも一階にはコンシェルジュという人達も居て、顔認識されているのか名前を呼ばれて挨拶されるから自分がものすごく場違いな気がして小さな体を更に小さくしてエレベーターに乗った。
玄関を開けると、岬がいつも通りの爽やかな笑顔で春を出迎えてくれた。
「春、良かった。来れたね?」
「いや、めっちゃ緊張した。何このマンション。セキュリティヤバくない?」
「そりゃあ、竜之さん心配症だからね。春に関しては」
竜之の名前が出てきて春は少し寂しくなる。
結局、あの日以来竜之には全く会えずにいてそのまま屋敷からも離れてしまった。
何でこんな不安なんだろう。
何故かここ数日胸騒ぎが止まらなくてソワソワしているのだ。
こんな事今まで無かったのに。
「春?」
岬が心配そうに自分を見ているのに気づき春は慌てて「部屋見ていい?」と明るく振る舞った。岬は自分のために一緒に居てくれるのだ。気を遣わせてはいけない。
「うん。おいで」岬は春の持っていた荷物を持ち廊下を進む。途中、トイレとかなりの広さがある風呂場を案内されリビングに通じる扉が開かれた。
「うっわ〜!」
春の目の前には視界いっぱいに地上21階の景色が広がり、その眩い景色に感動すら覚える。
俺だけこんな場所に居ていいのかな。
そんな思考が頭をよぎるが竜之が春のためを思い準備してくれたのだ。佐志の迎えが来るまでは楽しく暮らさないとな。
春は目の前に広がる風景を見ながら、しばらくは会えないであろう竜之の顔を思い出していた。
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