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「でも、、、何でそんなものが」
「今、警察も調べてはいるみたいだけど、防犯カメラにはバイクに乗った犯人らしき人物は映ってたらしいけど、顔を隠してたのとナンバープレートも細工されてたみたいだから洗い出しは難しいかもね」
御堂組はヤクザだ。
恨まれたりはあるだろうけれど
春にとっては家族の様に温かい場所だっただけにそれが壊される恐怖が体をジワジワと侵食していく。
ブルっ。
マンションの空調は自動運転で管理されているため快適な温度に保たれているはずなのに、体が震えてきて止まらない。
「春」
岬の手が春の手に重なる。
春が岬の方に目を向けると真剣な眼差しで自分を見つめていた。
「春、御堂はヤクザだ。いくら皆が優しくてもヤクザなんだ。それは揺るぎようがない。」
春は繋がれた手をそのままに黙って岬の言葉を聞いている。
「もし、春が安心できる場所を探しているなら御堂ではダメだ。所詮はヤクザ、裏社会の縛りがある。だけど春は、太陽の下伸び伸び暮らすのが似合ってる。だから、もし、それを望むなら。
俺がその場所になるよ。春に安心して暮らせる場所をあげられる」
安心な場所。
親が死んでからずっと春が探し求めていたもの。
確かにそれは岬が言ってる通りだ。
安全で。
温かい。
いつも揺るぎない場所。
だけど、春は知ってしまったから。
人を本当に好きになるという事。
相手の気持ちを信じられる事。
そして、
ずっと一緒に生きていきたいという希望も。
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