捨てる神あれば拾う神あり【番外編】

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「御堂組、次期組長、御堂竜之からお言葉を頂戴します」 襲名式はつつがなく進み最後の竜之の挨拶のみとなった。 皆が神経を張り詰めていた事案は、今のところ何も起きず杞憂に終わっているがまだ安心は出来ない。 竜之が、口上を述べている間も御堂の組員達は僅かな音一つにも瞬時に反応出来るよう目を光らせていた。 会長の座に着いた神だけは、竜之の口上を静かにだが感慨深く聞き入っていた。 無事に新組長である竜之の挨拶が終わり、司会進行役から最後の一本締めを合図に式は終わりを告げた。 この後は会場が祝いの場に変わり飲み方が始まるのが慣わしだが、爆弾騒ぎもあるため今回は用心のため後日に延期されている。 「とりあえず、今日はお開きだ。皆、身辺気をつけろ」組長となった竜之の言葉に御堂組傘下の者達が「はいっ」と一斉に返事し頭を下げて各自退出して行く。 「若、今警察から連絡ありましてボヤ騒ぎの犯人捕まったそうです」小野田が竜之の側に来て耳元で囁く。 「で?」 「度胸試しのようですよ。若いチンピラ風情が遊びの延長でやらかしたようです。」 「大吾は?」 「関係ないようです。もしかしたらあり金持って海外に飛んだかもしれないですよ。根は小心者でしたから」 小野田の報告に竜之はしばらく考えていたが、「竜之、とりあえず屋敷に戻って組員を労わってやれ。皆ここ数日駆けずり回って疲れ切ってるぞ」という神の言葉に頷き組員を引き連れてその場を後にした。
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