捨てる神あれば拾う神あり【番外編】

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バタバタ。 パタパタ。 ザワザワ。 今日も朝から色んな人の足音と雑音が耳に入ってくる。 先月から何やら慌ただしい日々を過ごしている理由は、御堂組の時期組長就任に関する会合が近々開かれるためだ。 極道という社会に関してはよく分からない事がほとんどだが、屋敷の皆がピリついた空気なのでよほど大事で失敗は許されないのだろうと肌で感じている。 春は会合には何の役にも立たないので、精力付く食事を心がけて毎日大量の食材と格闘しているが、ただ竜之は忙しいのか最近屋敷にもなかなか戻ってこないのでそれだけは寂しいし何だか落ち着かない。 「春、ちょっと」 佐志から呼ばれ広間に足を踏み入れれば、神を始め数人が何かを囲んで立っている様子が見えた。 「何?皆どうしたの?」 神の側に近づき輪の中の物に目を向ける。 ものすごく達筆な毛筆で書かれた文字の力強さと美しさに思わず息を呑んだ。そしてそれを書いたであろう意外な人物に目を向ける。 岬さん。 習字も出来るんだ。 すげぇ。 いつもはサラサラヘアーが肩にかかり爽やかなイメージの岬だが、今日の彼はゴムで髪を一つ結びしており凛々しい顔つきが際立っていた。
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