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あれから春は医師からも驚かれる速さで順調に回復し、リハビリも真面目に取り組んだため3週間で入院が終わり今日無事に退院の日を迎えた。
意識が戻ってからは組員達が入れ替わりに会いに来ていて、限られた面会時間にも関わらず看護師から注意を受けるほど賑やかな日々だった。特に佐志と陣内はほぼ毎日来てくれて、春が日に日に元気になるのを喜んでいるようだった。
まぁ、陣内は傘下の組からのお見舞いの品が目当てだった気もするが。
「春、出れるか?」
病室のドアから佐志が顔を覗かせた。
「うん。」
「じゃ、行くぞ」
春の荷物を手にした佐志がもう片方の手を春と繋ぎ前を歩いて行く。
「佐志さん、手大丈夫だよ。歩ける」
「俺が心配なんだよ。」
「ふふ。ありがと」
ニコっと微笑んだ春の頬を、佐志が親指と人差し指で軽く摘んできた。
「何?」春は笑いながら佐志を見上げる。
「春。頑張ったな。」佐志は春の頭をグリグリ撫でて「よし、帰ろう」とまた歩き出した。
帰る。
御堂に。
あの屋敷に。
大好きな皆がいる場所に。
いつもよりゆっくりなスピードで歩く佐志の優しさを感じながら春は嬉しい気持ちが溢れて少しだけ涙が溢れた。
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