捨てる神あれば拾う神あり【番外編】

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「なぁ、春どうだ?」神が腕組みしつつ自分の方へ視線を向ける。 「うん。すごくいい。これって今度の会合に使うの?」 「そうだ。代替わりする場合の襲名式の垂幕は前組長が作る慣わしだからな」 岬の書いた物は、「御堂組 襲名式」と書いてあり波打つ黒墨の力強い文字が浮かび上がってきそうな感じさえがする。 「神さんはもう御堂組を辞めるってこと?」 よく分からないゆえに春は率直に神に問いかけた。もし、神が辞めて屋敷にもっと居てくれるようになったら春は嬉しいが組長としての神を見れないかと思うと寂しい気もする。 「ん?まぁ竜之が落ち着くまでは会長としてフォローはするが基本的にはあまり矢面には立たねぇな。だからこれからは春ともっと一緒に過ごせる」 神はニッと笑い春を見る。 「うん。そうだと俺はすごく嬉しい」と春も笑った。 「岬、それで頼む」そう言うと神は小野田と共に座敷を後にした。 「春、久しぶり」 岬は春の側に来て手を握り爽やかな笑顔で笑いかける。だが、佐志が横から岬の手を振り解き春の体を自分の方へ寄せた。 佐志さん、屋敷で俺に絡むの珍しいな。 どうしたんだろ。 自分を後ろ手に隠すように立つ佐志の姿に少し驚きつつ、春は佐志の腕からヒョコと顔を出して岬に答えた。 「岬さん、久しぶり。習字すごく上手だねビックリした。」 「一応、師範資格は持ってるから」岬はそう言って再び春の側に来て「お茶しに行かない?」と誘ってきた。 「春は今から昼食の支度に取り掛かるので」何故か春の代わりに佐志が答えたが岬も引き下がる様子は見えない。 「さっき、組長から許可貰ったから大丈夫。 さ、春行こう。」 そのまま風のように腕を取られ岬に体ごと誘導される。 「俺は許可してねぇ」
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