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声がした方へ顔を向けると竜之が座敷に足を踏み入れようとしているのが見えた。
「竜之さん!」
春は竜巻のようにピュ〜と竜之の元に飛ぶように向かい彼の腰に抱きつく。
どうしても身長差があるため竜之を見上げるように見つめながら「お帰りなさい」と微笑んだ。
竜之は春の頭に手を置きポンポンと軽く触れた。「戻れなくて悪かったな」いつもの様に心地よく響くバリトンの声にウットリしつつ春はううん。と首を横に振る。
竜之の顔が見れた事で数日間会えなくて沈んでいた春の心はすっかり晴れたように軽くなる。
「岬、垂幕、礼を言う。手間かけたな」
岬に礼を言うと竜之はそのまま春の腰を掴み座敷から去って行く。
竜之達が仲良さげに去る姿を見ながら岬はため息を吐き「また邪魔された」と悔しそうに呟いた。
「岬さん、辞めといた方がいいって。春は竜之さんのだから」
毎回、岬が春に構うのをヒヤヒヤしつつ見ているだけに、佐志はもう辞めておけと釘を刺す。
「そうは言ってもねぇ。欲しいから仕方ない」そう言いながら岬は笑う。
結局、岬絡みで後で何か言われるのは佐志のため毎回春を守る様に盾になってはいるが岬が全く諦めないので手を焼いているのが現状だ。
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