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その頃、春は久しぶりに帰宅した竜之の体にピタっとくっ付き寂しさを埋める様に彼の体に触れていた。
「春、ちゃんと食べて寝てるか?何か軽くなってねぇか?」
竜之に抱きかかえられ春は彼の首に腕を巻きつけ首筋に顔をつける。
竜之のつける香水なのか彼自身の香りなのか分からないが春はこの香りを嗅ぐと安心するため、いつもクンクンと嗅いでしまう。
「こら、犬かお前は」
竜之が春を首元からベリっと剥がし「春、顔よく見せてくれ」と呟いた。
春は、竜之を真正面から見つめニコっと満面の笑みで微笑んだ。竜之は春が笑っていると嬉しそうにする。だから、出来るだけ笑顔を見せる様に心がけている。
「襲名式が終われば落ち着くから、どっか行くか?」
「いいの?竜之さんと一緒?」
「あぁ。2人は無理だろうが佐志と陣内連れてけば大丈夫だろ。」
「やった!嬉しい。約束!」
「分かった。だからそれまで我慢しろよ」
「はい。」
竜之の人差し指に顎をスルっと撫でられ春の腹の奥がズキンと疼く。
そのまま上に向けられて竜之の口付けが落ちてきた。最初から深く絡められるキスに必死についていくが息が次第に上がり体の熱も溜まり過ぎて自然と涙目になる。
「春」
竜之に呼ばれると体の芯が痺れた様に動けなくなる。自分の体に触れる無骨な指がスルスルと敏感な部分を刺激していく。すぐに耐えきれなくなり「竜之さん、お願い。」そう耳元で懇願し彼に体を開かれる。
ただひたすら彼の熱を体に受け、蕩ける体を揺さぶられ愛しい人の眼差しを体中に刻み込む。
竜之さん。大好き。
それが、春が竜之と過ごした最後の夜となった。
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