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それは1週間前に遡る。
「何だと?」
携帯を持ちながら神の鋭い声が響きわたる。
襲名式を3日後に控えたその日、会合を仕切る御堂組の傘下である三和会の組長から「御堂組に爆弾を仕掛ける」と脅迫する内容の封書が大量に届いたと神に連絡が入った。それ故に襲名式を延期したらどうかという相談だった。
「ふざけんじゃねぇ。ヤクザを脅すとはいい度胸してやがる。」
佐志は怒りのあまり近くにある置物を蹴り上げる。
「佐志、落ち着け」
神に一喝され佐志は「すいません」と頭を下げてその場にドサっと座った。
この数ヶ月、各傘下の組長との連絡、襲名に対しての同意の自署の取り付けなど前もって準備してきた事が意味を無くす。ましてや、竜之が同意を得るために根回ししてきた事が全て無になるのだ。佐志はそれが許せなかった。
「まぁ、脅しだとは思いますがどこから出てきたのかが問題ですし万が一もありますね」と静かに淡々と小野田が言うと「まぁ、もしかしたらはあるな」と竜之が同意した。
「じゃあ、延期するんですか?」
佐志は神の方を見る。
「いや、襲名式はやる。爆弾ごとき恐れてたらこの家業はやってけねぇわな」と神は不気味な笑みを浮かべた。
「佐志、予定通りに動け。御堂管轄のビル全てに監視カメラは付いているが警戒するよう下に伝えておけ」
「はい」
「あと、標的が屋敷かもしれないから春は別の場所に移動させる」
「え?移すって何処にですか?組の者は付けれませんし式が終わるまでは俺も動けないですよ」
神も竜之も式までは常に傘下の組に顔を出している状態なので屋敷にはあまり居ない。そのためお付きの者達も一緒に移動するため屋敷が手薄になっているのは事実だ。
「岬に頼む」
小野田と佐志が驚いた顔で竜之を見る。
「いや、若、岬は、、、」
「アイツは腕が立つ。春1人ならば守れるだろう。」
「まぁ、確かにそうですが、、、」
小野田が煮え切らない理由が佐志も分かりすぎる故に微妙な顔つきで竜之を見る。
「小野田、岬に連絡してくれ。」
「分かりました。住まいは岬のマンションでいいんですか?若」
「マンションは俺が準備する。そこに岬も住んでもらう。頼んだぞ」
竜之はそう言うとこれは決定事項だとその後意見を言う空気を遮断した。
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