第一章 また来てと瞬く間に揺らして

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「だ、大丈夫だから! 一人で歩けるから!」 「そんな真っ白な顔をして大丈夫とか言われても説得力ねーし」 私は三宅くんに支えられて保健室へとたどり着く。 今は保健室の先生はいないみたいだ。 三宅くんは先生が戻ってくるまで、私の傍にいてくれるみたいだ。 ふたりぼっちの保健室。心地よい温もりが私に訪れた。 連れ添ってくれた嬉しさと緊張で、私は胸がいっぱいになる。 「三宅くん、ごめんね」 「ごめんは禁止」 「……うん。ありがとう」 目の前には太陽のような三宅くんの笑顔。 その瞬間、私はそれまで経験したことがないような胸の高鳴りを感じた。 「……ねえ、三宅くん。聞いてもいいかな?」 「ん……?」 「共依存病って、どんな感じの病気なの?」 そもそも、共依存病とは何か。 そんな私の気持ちを汲み取ったのか、三宅くんは頬を撫でながら応えた。 「おう、一日置きに身体が入れ替わる病気だなー」 「よく漫画とかである入れ替わりみたいなのかな」 どう応えたらいいのか分からず、私は曖昧な顔で曖昧に返す。 「そうそう。そんな感じー」 心を奪われたのは笑う姿だった。 私はいつの間にか、三宅くんのことを目で追っていた。 「俺の相方、秋斗(あきと)って名前だから。こっちで出会った場合も仲良くしてくれよな」 「……うん」 今の自分とは別に、もう一人自分がいるのはどういう感覚なのだろうか。 まるで、どちらも自分自身のように三宅くんは表現している。 「三宅くんと秋斗くんは、その、兄弟……なの?」 「うーん、そうだな。同じ魂を宿している双子の兄弟みたいな感じかな」 「そうなんだね」 背中合わせで、言葉も交わせなくて。 それでも生きているもう一人の自分。 たとえ、どちらかが死んでしまっても、それはなかったことになったりはしない。 「違う学校に通っているの?」 「そうそう。父さんがなんつーか世間体を気にしてさ。同一人物が同じ学校に通っているのはまずいんじゃないか、って話の流れになって俺、三宅春陽はこの高校に。で、三宅秋斗は別の音楽科の高校に通う運びになったんだよな」 零れ落ちた言葉は、切なさを帯びて私の耳に届いた。 「それでも変に思う人がいるかもしれないから、って、秋斗の時は父さんに言われたとおりにキャラ作りをしている」 「キャラ作り……?」 私が不思議そうに首を傾げると、三宅くんはとっておきの腹案を披露するように笑った。
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